アート4コマ『漫喜利 -MANGIRI-』プロジェクト | TOSHIMA-MANGA-LAND

漫喜利 -MANGIRI-
アート4コマ公募展☆大講評!

2020年開催展総評

審査員長・しりあがり寿先生ら5名の審査員による総評と合わせ、各賞を受賞された作家さんらのコメント、審査員各賞は選者の評も合わせて掲載しております。

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審 査 員
審査員長 しりあがり寿(漫画家)
審査員  小田 雄太  (デザイナー、アートディレクター)
審査員  中村 ケンゴ (美術家)
審査員  関谷 武裕  (トーチweb編集長)
審査員  山内 康裕  (東アジア文化都市2019豊島マンガ・アニメ部門事業ディレクター)

審査員長 しりあがり寿(漫画家)
ルールは『4コマ漫画であること』だけ、あとは自由!そんなヘンテコな企画にマンガをはじめ、陶芸、デジタルアート、様々分野の皆さんが大勢参加してくださいました。えっこれも4コマ漫画?と新しい発想に驚きの連続の審査でした。見慣れた4コマ漫画の新しい可能性、4コマ漫画があらゆる垣根を越えてクリエイターが群れて戯れる、そんな場になる期待を感じた日でした。参加してくださった皆さん、ホントにありがとうございました!!

審査員 小田雄太(デザイナー、アートディレクター)
本展示は非常に面白いコンセプトで、各審査委員の皆さんも様々な解釈をされていると思いますが、僕は漫画が持つフォームをアートのフォームにどう置き換えるか?というのが本展示のテーマのひとつではないかと考えていていました。
また、漫画というものは定着させる媒体が印刷物であり、コピーされるのが前提であるという「複製芸術」的な宿命にあります。一方で、その元となる「原稿」は紛れもなく作家本人の手によるもので再現不可能な「純粋芸術」的な性質があると言えます。そのせめぎ合いが漫画というものを芸術的な側面で見たときの面白さなのではないでしょうか。
今回僕が注目したのは、その漫画特有の複製芸術的な宿命を、どのように純粋芸術のフォームに転換してゆくか。また、個人的にはその行為にどのような諧謔性や批評性があるのかを特に注目しました。

審査員 中村ケンゴ(美術家)
まずは美術家として、この国のクリエイションで世界が評価しているのはアートではなくマンガだということを自明としつつ、審査に加わらせていただきました。
さりとて MANGIRI は、「アートとマンガの垣根を超えて新たな才能を発掘する」というコンセプトがあり、また、印刷された作品ではなく、展覧会形式の発表なので、美術家としては、絵画的に見る方に傾いてしまったかもしれません。しかし、同時に4コマという形式も重要かと考えると、評価の基準を作ること自体が難しい。
マンガの形式を批評的に捉えたものが良いのか、展示として優れているのか、描かれた内容のおもしろさで見るのか、結局、評価の軸を定められないままでしたが、むしろそれこそが、このコンペのユニークさなのかもしれません。
内容的に応募作品全体を見て感じたのは、近世以前の日本の美術、例えば浮世絵や水墨画などからインスパイアされた表現が少なくないということでした。モダンアートよりも、そうした表現の方がマンガと相性がいいのでしょう。
いずれにせよ、受賞作品もバラエティに富んだものになりましたが、それは審査の難しさの裏返しであり、また可能性でもあります。今後もクールなものから一発ギャグまで、様々な方向性があっていいと思います。

審査員 関谷武裕(トーチWEB編集長)
『漫喜利 -MANGIRI-』ってなんなの……しかもアート4コマっていうのもついてるし……という思いを抱えたまま審査会場に着いて作品を眺めていると、「これが漫喜利だったのか」と腑に落ちたもんだから不思議なもんで、鑑賞者としても講評者としても驚きと可笑しみのある展覧会でした。
表現する手法は漫画からアニメ、インスタレーション、立体、洋画、日本画から現代美術的なものまで様々、それらが4コマという制約の中で「漫然」と大喜利するという「遊び」は何だか「句会」や「歌会」のようなものを想起させられ、鑑賞者として優雅で豊かなものを感じました。
コマを割ると空間や時間が区切られます。コマとコマの関係は物語を生みます。4コマはビジュアルだけでなく、時間や空間を限定し、限定されたコマの連なりによって発生する物語でもって、ギャグもストーリーも不条理も萌えも表現できる形式です。コマ数を増やして描けばストーリー漫画やアニメになるし、コマ数を1つに凝縮すれば絵画にもなります。全くやる必要は無いかもしれませんが、一度自分のやっている表現を4コマにするとどうなるかやってみると、何か思うことがあるかもしれないし、無いかもしれません。
『漫喜利』という余興のような、宴会芸的な側面すら感じられる機会から、制作過程や展覧会期中のコミュニケーションによって個々人が新たな着想や可能性に気がつき、新たな道が拓けるんじゃないか。そんな予感のする熱気とユーモアに溢れた展覧会でした。活動する場や年齢差を飛び越えて、年に一度、自らの表現技法を4コマ形式であえて表現してみるという「遊び」を持ち寄って一堂に会する、非日常的で刺激的な「祭り」のような『漫喜利』第二回開催を、タモリの密室芸を思い浮かべながら待とうと思います。

審査員 山内康裕(東アジア文化都市2019豊島マンガ・アニメ部門事業ディレクター)
第1回の実施に相応しい、様々な作品が集まったのはとても良かった。「4コマ」「コマ」「マンガ」「アート」「大喜利」そして「マンガ×アート」、通常は相容れないお題を、それぞれの解釈で表現してもらえた結果だと思う。
今回、大賞が選ばれなかったのは、審査員の満場一致で選べる作品が無かったこともあるが、結果的には良かったと思う。今後の「道」を示すのは、まだ早いとも言えるのではないか? 来年度も審査員を悩ませるような様々なバリエーションの作品を応募してもらいたい。

作品審査の様子
講評会動画撮影の様子

各賞受賞者のコメント

審査員全員一致で大賞作品を選出できませんでしたが、優秀賞4名と合わせ、各審査員賞5賞、そしてオーディエンス投票によるオーディエンス賞、計7賞10名の作家さんのコメント。審査員賞は選者の評、また一部作家さんからは〈マンガコメント〉をいただきました!

審 査 発 表
優秀賞くっつー
小寺しお
ちゃちゃきなな
東 春予(IAG賞)
しりあがり寿賞田中 宰
中村ケンゴ賞手塚健陽
小田雄太賞倉内龍子
関谷武裕賞平良志季
山内康裕賞かなやまひろき
オーディエンス賞ゆうゆ
クリックすると各賞受賞作家コメントへリンクします

くっつー

この度は素晴らしい賞を頂き、驚くと共に本当に嬉しく感じております。
4コママグカップは、4コマ漫画を使って何か作れないかなと思った時、考えて考えて考え抜いてたどり着いた結論の一つでした。
作品名の「A Breakthrough」は、ずばり「突破せよ」ということで、日頃凝り固まった思考を一度整理しなおしてチャレンジしろ!という自戒を込めて命名しています。
手に取った人が漫画を見て、ちょっとでも「クスッ」としてくれたら、作者としてこの上ない幸せです。
このような栄えある賞に選定して頂いたこと、心より感謝申し上げます。
マンガで表現!

小寺しお

記念すべき第1回目の「漫喜利」で優秀賞を頂き、大変嬉しく思います。 今まで写真を使った作品で活動していましたが、今年から絵の作品も発信していこうとしていたところ、まさかの優秀賞を頂き嬉しいスタートとなりました!
「アートか?マンガか?どっちだっていいじゃない!?」という漫喜利のキャッチコピーが、勝手ながら自分の居場所を見つけた様な気がして、迷わず応募しました。
ただ自分が描いていて楽しく、カッコいいと思うものを描かせて頂きました!
漫喜利のこれからの益々の発展と、漫画とアートの垣根を超えた表現の可能性を願っております。この度は、ありがとうございました!

ちゃちゃきなな

この度は思いがけず優秀賞を頂きまして、
大変光栄に嬉しく思っております。
新型コロナ禍で困難な状況下で審査と展示をして頂きました
運営事務局の皆様、審査員の皆様、関係者の皆様に
深く感謝を申し上げます。
今回の漫喜利-MANGIRI-は
長く漫画の仕事をしつつ羊毛フェルトの制作もしている私にとっては
あまりにぴったりの公募展でありました。
とは言っても、
4コマ漫画を羊毛フェルトでどう表現するかは難しく
自分が目指す表現に技術が追いつかず
悔しさを感じながらの制作でした。
それでも今出来る精一杯の力を注ぎ作り上げました。
会場で展示をご覧下さった皆様、本当に有難うございます。
また今回はSNSで沢山の皆様にご覧頂き
拡散して頂きまして驚くと共に感激しております。
これからもさらに精進し、
皆様に楽しんで頂ける作品を作って行きたいと
思っております。
マンガで表現!

東 春予(IAG賞も受賞)

現在、漫画はわかりやすく伝える媒体としての側面ばかりが持て囃されているように感じています。それは漫画の広がりを助けるものでもありますが、形式が形骸化してゆく理由でもあります。
私が漫画を通じ、何かを物語ることについては一切何の興味もありません。コマにくり抜かれた絵の連続として、いかにして物語られてきたか/物語られてゆくか、その道筋、作用そのもの、わたしはそれだけに用があります。
ストーリーは不要です。キャラクターのキャラクター性は不要です。メッセージは不要です。「読者」の心に残るものは不要です。
リズムと言葉を持つ楽曲を他者からお借りして制作を続けているのはそれらを自ら決定しないためです。スクリーントーンを手で描いているのは、それらを色や質感としての解釈から、二階調の制限のなかで中間色を取る手段としての、たんなるドットの連なりを戻すためです。
何かを伝えるための媒体や記号から意味を引き抜き、形式がそれそのものとして在る場を作っています。そのため既存の漫画の文法、文体を疑う必要があります。破壊し、解体する必要が常にあります。
わたしはそういった制作をしています。
これからも続けてゆきます。

しりあがり寿賞

田中 宰 さんの作品について
マスクに描きこまれた4コマ漫画、4コマ漫画に見立てた満員電車に見立てたキャビネット。コロナによって変わっていく世界、誰もがその変化、行方に不安いっぱいでいた時に、その社会を無理やり4コマ漫画という形に押し込めようと格闘していた、そんな作品だと思います。真摯さと笑いがゴチャゴチャになったこの作品には『現在』をカタチにした、そんな価値を感じます。

受賞者の言葉:田中 宰
この度は、漫喜利という伝統ある大会におきまして、しりあがり寿賞という大変に名誉ある賞を頂戴し光栄に思います。
私としましてはまだ学生身分であり、この栄誉は私個人の力ではなく、これまでに自分を支えてくださった同僚や部下を5ミリ程度の厚さにスライスします。
(お好みで漫画と日本の美術を混ぜますと村上隆が出来上がります。)
マンガで表現!

中村ケンゴ賞

手塚健陽 さんの作品について
中村ケンゴ賞に選ばせてもらった手塚健陽さんの作品は、絵画、イラストレーション、マンガ、浮世絵など、ジャンルを横断した表現に魅力を感じました。色彩や筆触もクールで格好が良い。4つの画面から、これから始まるであろう大きなストーリー性も感じました。
また、日本におけるアートとイラストレーションの関係は、独特の進化を遂げているので、そうした面での評価もあっていいのではないかと考えました。

受賞者の言葉:手塚健陽
この度は中村ケンゴ賞をいただきありがとうございます。
今回は漫画というより、現代アート寄りの視点で作品を作りましたので、中村さんから評価されたことは大変嬉しく思います。
この「ある島での出来事」は4枚で構成されていますが、通常の4コマの起承転結にはなっておらず、その物語の一部、核となる場面だけを抜粋しています。そして各場面は映画のワンシーン、写真の一枚、絵画の一枚等、複数のメディアを意識し、第三者が客観的にその出来事の一場面を切り取ったかのように表現しています。それにより、起こった出来事の一つの側面だけを人為的に見せることで、他の側面もあることを気づかせ、実際に起きていることは何なのか、想像させ、多様な解釈を促すように制作しました。
現在は北極を舞台にした作品も制作中ですが、また皆様にお見せできる機会がありましたら幸いです。HPもぜひご覧ください▶https://kenyou.wixsite.com/fine

小田雄太賞

倉内龍子 さんの作品について
4コマという漫画のフォームであり本展示の制約を、四天王というなんとなく日本の伝統芸術を最大公約数的に感じさせるモチーフに置き換え、なんとなく日本のサブカル的な戦隊モノに置き換えて(しかも5人じゃない)適当なエフェクトを背景にしてなぜかアメコミ的なエフェクト音が並べてあるという適当さ。
また、この作品は木製パネルに画用紙を水張りするという手法で定着されていますが、よく見るとシワが寄っていたりしており定着についても徹頭徹尾のゆるさにツッコミせずにはいられない佇まいがありました。
こういった緩さや適当さをまとめる際に発生する「熱」も感じさせないクールさが全体にあり、ギャグ漫画のような空虚な諧謔性を感じました。
ただ、一方でこういった緩さや空虚さがただの天然であり、作家の無自覚である可能性もあるのですが……それがただの杞憂であって欲しいと言う願いから最高点は別の作品につけつつ、本作品を小田賞としました。

受賞者の言葉:倉内龍子
この度はこのような賞をいただき、大変うれしく思います。
この作品は、約束事の様なものを破ったり対極にあるようなものを組み合わせたミスマッチ感で、アートと4コマ漫画というテーマを表現しようと考えました。
4コマ漫画のオチ感という事を
・組み合わせの変さ(組み合わせ自体がオチ)
・ばかばかしさ
・4つのテンポ(実際には5つ)
漫画という部分では
・画面に文字や吹き出し、擬音をいれる
・コマ割りされている
アートとしてでは
・1枚の画面におさめる
ミスマッチは
四天王(像)の芸術性と子供向けテレビ番組の代表的な戦隊物
完成後は、こんなメチャクチャなので大丈夫かなとちょっと不安になりましたが、思い切って応募して本当に良かったです。
ありがとうございました。

関谷武裕賞

平良志季 さんの作品について
絹本着彩の妖怪画作品としていわゆる日本画的立派な佇まいに思えるものが、何故か4コマ漫画で妖怪ギャグものが描かれている。ぱっと見てまず「なぜそんなことを」と笑ってしまう。画面に書かれた文字を追っても達筆すぎるのか崩れすぎているのか何を書いているのかよくわからない。落款も捺してある。どこの誰が描いたのかわからないが立派に見える絹本着彩の妖怪画だ。だけど4コマ漫画で、しかもギャグ漫画のようだ。でも何故そんなことを……これは一体なんなのか……
絹本着彩作品として、妖怪画として美しく見入ってしまうが、先述した想いがグルグルとするのでより一層目をみはる。その創作過程を想い、愛着を感じつつ、笑ってしまう。

受賞者の言葉:平良志季
光栄です! これからも漫画描いて行きたいと思っております!
ありがとうございます!
マンガで表現!

山内康裕賞

かなやまひろき さんの作品について
コマに見立てた建物の中には無言のフキダシがぶつかりあうように詰まっている。
建物間の表現も加えて、外に出せない言霊とうごめく不安を想起させる。
言いたいことが詰まっているけれど、外には出せない。SNSが普及して良くも悪くも一個人が社会に発言できるようになっているが、それは一部で、内で留まるものはある。
コロナ禍状況下の自宅待機が強制させたタイミングで、よりそれが助長されているであろうし、家庭内で留まる普段出さない言葉を発していることもあるだろう。
奇しくも、コロナ禍状況下での人々の外に出せない不安を感じ取ることができる本作だと思う。まさに2020年のこのタイミングで評したい作品だ。

受賞者の言葉:かなやまひろき
この度は審査員賞を受賞ということで、大変うれしく、感謝しております。
この公募展のテーマは、ただの漫画ではなく4コマ漫画ということで、テーマの縛りがより強くなり、このテーマでアートを制作することはとても難しいものでした。
アイデアを出すのに苦労しましたので、今回、賞を頂けたことは、とてもうれしく、今後の活動の励みにもなります。本当にありがとうございました。

オーディエンス賞

来場されたお客さまより、気に入った作家・作品へ投票していただいた結果、一番票を得た作家に授与される賞です。

受賞者の言葉:ゆうゆ
この度は、アート4コマ『漫喜利 -MANGIRI-』の
オーディエンス賞に選んでいただき
ありがとうございました。
自分の作品を大勢の人々にみてもらえただけでなく、
オーディエンス賞までいただけたことは
想像を超える貴重な体験で、
いまだにワクワクがとまりません。
この喜びを忘れず、これからも
制作に励んでいきたいと思います。